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電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > 電動機の種類と保護方法

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電動機の種類

電動機には、誘導電動機、直流電動機、同期電動機、整流子電動機があり、それぞれの動作特性はまったく違っており、用途や目的によって使い分けられている。これら電動機は、直流電源で駆動する「直流電動機」、交流電源で駆動する「誘導電動機」、大型電動機に適している「同期電動機」のほか、特殊用途向けとして普及している「整流子電動機」などがある。

建築物の電気設備分野では、換気ファンに誘導電動機が広く用いられており、非常用発電機などは同期電動機が用いられている。ここでは、電動機の仕組み、種類による特性や用途の違い、電動機の保護方式などを中心に、電気設計の実務について解説していく。

屋上に設置されたダクトファンの写真

電動機の種類

直流電動機

直流電源が必要で、動作時にブラシが磨耗していくため定期メンテナンスが必要になるが、速度の自動制御の精度が高いという利点がある。汎用電動機として採用されることはないが、起重機やウインチ、電気鉄道用電動機として使用されている。

電源の電圧が高くなると、回転速度が早くなるという単純な仕組みのため、速度制御が簡単である。極性を反転させれば、逆方向に回転させることもできる。直流電動機は、モーター部を回転させることで発電するため、発電機として使用できる。

ブラシをインバーターに置き換えて、摩耗部品を低減した「ブラシレス直流電動機」と呼ばれる電動機が開発されており、シェアが広がっている。高い速度応答性や効率を維持しているが、制御基板やマイコン、インバーターコストが大きいため、全ての直流電動機に置き換えられているわけではない。

誘導電動機

誘導電動機は、安価で構造が簡単、堅牢かつ保守点検が容易であるという数多くの利点がある。電動機の製造業者が多いため、発注後の制作期間が比較的短く、一部では即納対応も可能という点も評価される。採用実績も非常に多く、広く普及している電動機である。

反面、力率が悪いという欠点があるので、進相コンデンサなどを付設し力率改善を行うと、より省エネルギーに運用できる。

普通かご型誘導電動機は3.7kW以下、特殊かご型誘導電動機は5.5kW以上に適用される。0.2kWの小型電動機から、500kWを超える超大型電動機まで幅広く生産されている。小型のものは三相200Vや三相400Vで駆動するが、100kWを超えるような大型電動機では、3,300Vや6,600Vの高圧電力で直接駆動させることもある。

小型の誘導電動機であれば、交流電源を直接加える「全電圧始動」という方法で始動できるが、大型の誘導電動機では、全電圧始動を行うと始動電流が大きくなり過ぎてしまい、電圧降下が発生して施設全体の電圧が低下することによる悪影響を及ぼすことがある。悪影響を防止するため、スターデルタ始動やコンドルファ始動など、始動装置を用いて電動機を始動させている。

同期電動機

回転磁界にある中で磁石を回転させ、電源周波数に同期して回転する。電源周波数に同期できなければ安定した回転が望めない。主に、化学工場やセメントミル用など、大規模な電動機用として採用実績の多い電動機である。力率が良く、大容量の電動機に適している。系統の力率調整を行うことも可能である。

同期電動機は構造が複雑で、保守点検のコストアップにつながること、高価であることなど、欠点もある。始動電流が大きいため、始動器がなければ運転を開始できないことに注意が必要である。同期電動機は、許容以上に負荷が大きくなると、同期速度が維持できずに停止する「同期はずれ(脱調)」という現象が発生する。

整流子電動機

速度制御が容易で、電力損失を小さく抑え、低速度でも高い力率を保持できる電動機である。誘導電動機に比べ、価格が非常に高く、整流子の保守点検が複雑でコストが高くなる。大出力の送風機など、特殊用途向けの電動機として採用される。

電気掃除機(直流モーター)の仕組み

モーターの回転力によって圧力を発生させ、ほこりやゴミを吸い取る電気掃除機は、直流電動機によって機械的なエネルギーを得る電気機器である。電気掃除機は、整流子電動機を用いて強いトルクを生み出し、圧力を発生させている。

圧力差に空気と一緒にゴミを吸い込み、空気はモーターを冷却した上で排出される。このとき空気と一緒に吸い込まれるゴミ類は、フィルターによって通過できず、空気だけが排出される。

家庭用電源は単相の交流電源であるが、回転力を生み出すために使われている整流子電動機は、交流電源でも回転できる。モーターに内蔵している磁石を電磁石とし、回転子のコイルと直列接続することで、交流回路が電流の向きを反対にしても、合わせて電磁石の極性も反転するため回転方向が常に一方向となり、同じ方向に回転を続けられる。

電動機の特性

定格出力

電動機が保証できる出力の限度を示している。機械出力 P = √3 × V × I × η × cosθ で示せる。V = 電圧、I = 電流、η = 効率、cosθ = 力率 である。

極数と周波数

電動機の回転速度 N = 120 × f / P [rpm]で算出できる。周波数が高いほど電動機の回転速度は上昇する。東日本エリアでは50Hz、西日本エリアでは60Hzの周波数となっているため、同じ電動機の場合、西日本エリアで駆動すると回転速度が高くなる。

負荷特性

電動機は、動作の方法によって特性が区分されている。連続使用、短時間使用、反復使用など、電動機の用途によって特性が決められている。

S1は、電動機が熱的平衡に達し、一定の温度を持って連続運転する場合である。24時間換気用途のファンなど、停止させることなく運転させる電動機はS1に分類される。

S2は、電動機が熱的平衡に達する以前に停止し、一定の温度まで冷却される運転方法の電動機である。

S3は、S2のような短時間運転を繰り返す運転方式で、一定の温度まで冷やされずに何度も繰り返す反復運転をする電動機である。始動や制動による影響を無視できるようであればS3に該当するが、影響がある場合はS4~S8に該当する。繰返し運転に対しても、電動機の絶縁が劣化せず、期待される寿命が維持できる性能を持たせている。S9は、時間とともに負荷や速度を変化させて使用する電動機である。

電動機の事故と保護対策

電動機の事故は、過負荷・欠相・地絡・不足電圧の四項目によるものが多く、それぞれの異常状態に対して、保護継電器を設置することで機器本体や電路を保護している。

電動機の過負荷保護

誘導電動機の過負荷運転をすれば巻線が温度上昇する。電動機の回転子が、抵抗によって拘束されれば、これも過熱の原因となる。厨房排気用ファンなど、油脂の汚れが考えられる電動機の場合、油脂の粘着力によって回転子が拘束された場合、回転に負荷を与え異常発熱を起こす。

拘束状態のまま放置すると、巻線の温度が上昇していく。温度の許容限界を超過した場合、焼損や絶縁劣化が発生し、機器の故障を引き起こす原因となる。電動機に期待できる寿命を満足しなくなり、発熱が異常に大きくなれば、焼損することも考えられる。

電動機の上位側に設置する配線用遮断器は、電路が短絡した場合に保護するための役割を持つものであり、始動電流で動作しないように選定する。電動機の過負荷に対しては、保護できない。

電動機を保護するため、電動機の一次側かつ配線用遮断器の二次側に、サーマルリレーを設け、異常電流による発熱を検出させ、電路を保護する計画とする。

電動機の欠相保護

三相電源のうち、ひとつ以上の相が失われる事を、欠相と呼ぶ。三相電圧で運転しなければならない電動機が、単相で運転されている状態である。欠相の原因は、電路のヒューズ溶断などが考えられる。欠相運転している電動機は、線電流が√3倍となるため、過負荷として検出される事が普通である。

しかし、電動機が軽負荷運転をしていた場合は、線電流の増加が検出されず、欠相のまま運転を継続してしまうことがある。電動機の欠相保護のためには、欠相を保護するリレーを電路に設ける。リレーには、3Eリレーという、過負荷・欠相・逆相を保護できる製品もあり、保護継電器を電路に組み込む事で、欠相に対しても保護される。

常に全負荷で運転されるような負荷の場合は、過負荷保護のみで欠相を検出できるが、保護の対象が違うために完全ではない。安全を考えれば、欠相要素も保護対象とし、設計に組み込んでおくと良い。

電動機の欠相検出には、過電流を計測する方式と、電圧低下を検出する方式があるが、電流要素による検出が有利である。電圧検出方式では、欠相が発生した場合でも、軽負荷運転が継続できるような場合、電圧が思うように低下せず、事故検出しない可能性がある。電圧方式よりも電流方式を選定することが望まれる。

電動機の反相保護

三相誘導電動機は、相の順番が逆になると逆回転する。電動機がどちらの方向に回転してもよいのであれば支障ないが、そのような用途は考えられないし、排風機等では、順方向に回転しなければ効率良く風を送る事ができない。

電動機が反対方向に運転したことを検出する保護要素を、反相要素と呼ぶ。しかし、建築設備として使用する汎用ファンは、ひとたび設置してしまえば配線替えをすることは稀であり、反相運転が発生する事故は通常考えられない。反相要素を持たせる電動機は、配線の取外し再取付を頻繁に行う移動用電動機など、接続頻度が高いものに付加すると良い。

電動機の漏電保護

電動機の大きな故障要素として、漏電がある。電動機の内部配線が損傷・劣化して金属箱に接触するなど、回転機械から発生する振動で配線が損傷する事故は多い。

漏電は電源が大地と導通している状態であり、電線が損傷していた場合、相間短絡事故に波及するおそれがある。漏電を検出した場合、速やかに改善しなければならない。

大きな電流が流れる完全地絡に対しては、漏電遮断器によって電路遮断を行うのが一般的であるが、微小な地絡電流を検出できるように、ELRを設けて警報表示を行うことも考えられる。

電動機の不足電圧保護

電動機に供給する電圧が定格よりも下回ると、電動機に流れる電流値が増加し、巻線の異常過熱のおそれがある。電動機に電源供給が途絶えた場合、電動機が停止するが、復電すれば再起動する。点検作業などで不用意に人が近づいていた場合、電動機の回転駆動部に接触しては危険なので、停電を検出した瞬間に電路を開放するという保護も考えられる。

3Eリレーによる電路保護

3Eリレーとは、三相電動機の「始動時、運転中、拘束による過負荷」「欠相」「逆相」の3要素を検出し、電磁接触器を動作させ電動機の焼損事故を防止するための継電器である。従来は誘導形のものが使用されているが、最近では静止形のものを使用することが多くなる。

誘導形3Eリレーは、3組の電磁石が設けてあり、三相回転磁界に回転力を与える仕組みになる。健全時には円盤は回転せず、異常時に回転する。

過負荷検出では、各相に流れる電流値が増加し、くま取りコイルの回転力が増加することで円盤が回転を始め、過負荷接点を閉じることで事故検出を行っている。過負荷検出では、電動機の始動電流で動作しないように、電動機始動時間を設定することでミストリップを防止している。

欠相検出では、電動機に三相電源ではなく単相電源が印加された状態になるため、三相回転磁界による回転力が失われ、円盤が回転することで逆相・欠相接点が閉じ、事故検出される。

逆相検出では、三相回転磁界が逆方向になるため、円盤が勢い良く回り、逆相・欠相接点が閉じ、事故検出となる。

電動機の規約電流と過電流遮断器選定

規約電流とは、誘導電動機の配線や遮断器を設計するために、全負荷電流値として定められた電流値である。下表は、三相かご形誘導電動機の規約電流である。使用回路の電圧が220Vの場合は、規約電流値を0.9倍した数値を使用する。

定格出力(kW) 規約電流(A) 過電流遮断器の容量 接地線最小太さ(mm)
じか入れ(A) スターデルタ(A)
0.2 1.8 15 - 1.6
0.4 3.2 15 - 1.6
0.8 4.8 15 - 1.6
1.5 8 30 - 1.6
2.2 11 30 - 1.6
3.7 17 50 - 2.0
5.5 26 75 40 5.5
7.5 34 100 50 5.5
11 48 125 75 8
15 65 125 100 8
18.5 79 125 125 8
22 93 150 125 8
30 124 200 175 14
37 152 250 225 22

選定するメーカーに電動機の力率や効率が違っているため、同一負荷容量でも若干変動する。幹線や遮断器は規約電流を使用して設計を行うことで、どのメーカーの電動機を選定しても、安全な幹線・遮断器を計画できる。

電動機における過電流遮断器の選定は、始動電流によって遮断されない容量として選定されるが、メーカーが政策する特殊な電動機では、汎用のモーターと違う特性を持っていることが多いため、電気容量をそのまま当てはめず、メーカーの推奨遮断器容量を採用するのが良い。

 
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