電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 除湿機の種類と効果的な使い方
除湿機は、その名称の通り、空気中の水分を奪うための電気機器である。空間の湿度が高すぎると、ジメジメした空気を不快に感じるだけでなく、室内にカビの繁殖が促進されることにも繋がる。家具の背面といった気流の流れが悪い場所や、洗面所など恒常的に湿度が高くなる部屋では顕著であり、カビにより壁紙や床が黒くなることがある。
除湿機は、空気中の過剰な湿気を取り除き、快適な室環境を実現するために用いられる。特に日本国内は湿度が高い地域が多く 、広く普及している家電製品のひとつである。
除湿機は、空気中から水分を取り除くことで湿度を下げる電気機器であるが、室温を下げることはできない。湿度を下げることができれば、体感的な涼しさを得ることが可能だが、数値としての室温は確実に上昇する。
多機能な除湿機は、湿度を下げるだけではなく、衣類の乾燥機能などが付与されている製品もあり、洗濯物の部屋干しというシーンにも活用できる。除湿機は梅雨~夏のジメジメした季節に使うイメージがあるが、乾燥機としての機能をもつ製品であれば、オールシーズンで活用できる。
エアコンも、冷房運転することで除湿効果がある。冷房により室温を下げると、水分として空気中に含むことができる水分量が減るため、エアコンの内部にドレン水として付着する。これを屋外に排出することで、室内空気中の水分が減少するため、湿度が低下する。
除湿機の主な利用シーンとして、「雨天時の湿気対策」「洗濯物の部屋干し」が考えられる。どちらも室内の湿度を高め、室内の空気環境を悪化させる原因となる。
特に、梅雨時期は雨が多いため室内に洗濯物を干す事が多く、梅雨と洗濯物の両面から室内湿度を上昇させるため、湿度の上昇幅は非常に大きい。
部屋の湿気を抑えるという一般的な利用方法のほか、浴室に隣接した洗面所や脱衣室といった、湿度が急激に変化する環境でのカビ発生防止、押入れや物置内の除湿にも利用される。冬季においては窓の結露対策に使うこともある。
除湿機を通した空気は乾燥し、乾燥した空気に変化するが、温度は上昇する。夏場は室温上昇を伴うため、リビングの居室ではエアコンを使用する方が良いという意見もあるが、エアコンは持ち運びができないため、押入れや物置・納戸での除湿のほか、洗面所のカビ発生防止といった場合に除湿機が活躍する。
雨天時には外に洗濯物を干せないため、部屋干しをするシーンは多い。部屋干しをすると、衣類に含まれている水分がすべて室内に放出されるため、室内の湿度が一気に高くなる。乾燥に時間を要すこともあり、衣類や室内への臭気の発生や、日射と比べてそもそも乾燥に時間を要すという問題もあるが、除湿機により強制的に湿度を下げることができれば、これらの問題を低減できる。
雨天に限らず、花粉や黄砂といった別の要因でも、晴れた日に屋外に衣類を干せないこともあるため、部屋干しをする機会は比較的多い。
除湿機には、コンプレッサー式、デシカント式(ゼオライト式)、ハイブリッド式というように、その動作機構によって特徴が違っている。簡単な分類として、コンプレッサー式は夏季利用、デシカント式は冬季利用、ハイブリッド式は通年利用を主目的としてラインナップされている。
電気エネルギーで除湿機に内蔵されているコンプレッサーを駆動させ、冷媒がガスや液体に変化による際の熱移動を利用した除湿方式である。エアコンと同じ機構であると考えて差し支えない。
エアコンでは冷房運転をすると、室内機に内蔵されたコイルが冷却され室内空気が結露し水滴に変化するため、これをドレンホース経由で排出することで湿度を下げられる。除湿機では、機器内部で同じ現象を発生させ、結露水を内蔵タンクに貯蔵する。結露水の排出は基本的に人の手で行うが、ホースを接続することも可能である。
エアコンであれば、室内機から冷風が発生し、室外機から温風が発生するという仕組みであり、熱交換は各々別の場所で行われているが、除湿機の場合、本体にコンプレッサーを内蔵しているため、暖気と冷気は同じ場所で発生する。除湿運転を行うことで熱が発生し、これが室内に放出されることで室温が上昇する。
上位機種の除湿機では、この暖気と冷気の発生を利用したものがある。暖気と冷気を別の吹出口から放出し、冷気側を人体に当てることで、スポットクーラーとして活用するという製品もある。除湿機を稼働させた場合、熱交換には効率があるため、全体の熱量は暖気の方が多くなり、室温は確実に上昇する。コンプレッサー利用した除湿機では、駆動させるための発熱により室温が1~2℃程度高くなるとされる。
コンプレッサー式の除湿機は、空気を冷却し結露を強制的に発生させて除湿する方式のため、気温も湿度も高い「夏季」に高い効果を発揮する。しかし逆に冬季など、室温が低く乾燥している時期は結露の発生が非常に少なくなり、除湿効果が発揮されないという欠点がある。
除湿機を夏場に使用するのが前提であれば、コンプレッサー式の除湿機を選択するのが良い。コンプレッサー式の除湿機は騒音が大きく、重量も10~15kgと重いため、頻繁に移動するような使い方や、寝室など静かな環境を求める場所での除湿には、あまり適していないため注意を要する。
デシカント方式の除湿機は、除湿材が充填された空間を、湿気を含む空気が通過することによって除湿する方式である。デシカント式の除湿機は、ゼオライト式という名称で呼ばれている。
空気中の湿度を吸収した除湿材は、電気ヒーターによって温められた後、熱交換器を通る際に室温によって冷やされ水滴に変化しタンクに貯蔵される。除湿材は電気ヒーターによって暖められて乾燥し、吸湿し除湿性能を失っていた除湿剤は再度除湿性能を回復し、再度除湿効果が発揮される。これを繰り返すことで除湿が行われる。
デシカント式の除湿機は、電気エネルギーによってヒーターを加熱して運転するため、冬季など低温時でも高い除湿性能を発揮する。温度が低い状態でも高い除湿効果を持つため、冬季の雨天時とでの部屋干し時に発生しやすい、窓結露の対策が可能となる。
電気ヒーターを使用するために消費電力が大きくなることや、除湿ドの発熱量が多く、運転に酔って室温が4℃程度高くなる。冬季であれば除湿と共に暖房効果を期待できるが、夏季にデシカント式の除湿機を使用すると、室温が上昇し過ぎてしまい温度環境が著しく悪くなる。
冬場の結露対策などを目的に除湿機を選定する場合は、デシカント式の機種を選択すると良い。デシカント式除湿機は、コンプレッサー式除湿機よりも騒音が小さく、重量は5~10kg程度のため軽いという特徴がある。
軽量なため、頻繁に移動するような使い方も可能であり、住宅であれば多くの部屋に運んで使える利点がある。除湿をする時期や環境に応じて、コンプレッサー式とデシカント式を選択するのが良い。
コンプレッサー式とデシカント式の両方の機能を、1台の除湿機に搭載した多機能除湿機である。両方の特徴を持っているためハイブリッドという名称が付けられている。
夏季など温度・湿度共に高い環境ではコンプレッサー式による駆動を行い、冬季など温度が低い環境では、デシカント式による駆動を行うことで、周囲環境に影響されない高品位で効率の良い除湿が可能な製品である。
コンプレッサー式とデシカント式の両機能を搭載している関係上、本体のコストが高いという問題がある。機器重量はコンプレッサーを持っているため重く、騒音はコンプレッサー駆動であれば大きく、デシカント駆動であれば小さいということになり、その時の運転方式によって違ってくる。
通年を通して除湿機を有効に使用したいのであれば、ハイブリッド式を選択するのが望まれる。夏季はコンプレッサー式のメリットを活用でき、冬季はデシカント式のメリットが活用できる。本体価格が高いという欠点があるが、安定した除湿能力を期待したい場合には、ハイブリッド式除湿機を選定すると良い。
除湿機を使用すると、コンプレッサー式・デシカント式のどちらであっても室温上昇は避けられない。除湿機に冷風機能付きの製品が販売されているが、これは室内にいる人に対して直接冷風を当てることで冷気を感じられる程度のもので、室温を下げつつ除湿できるという機能ではない。
密閉した室内で除湿と冷房を同時使用しても、本体から放出される冷風とともに、温度の高い排風も同時に放出されるので、トータルでは熱交換の電力ロス分だけ室温が上昇する。エアコンのように、熱交換された温風を外部に放出しているわけではないため、室温は上昇傾向となる。
温風が放出される側を換気することで、室外に排風を追い出すことができれば、除湿効果と冷房効果を同時に得られる。冷風機能が付属した除湿機は、閉めきった室内で使用することなく、一定の換気・通風ができるよう考慮するのが良い。
単純に、除湿機を窓近くに配置し、窓を開けて排熱を外に出すという使用方法では、窓を開けたことにより湿度の高い外気を室内に呼び込んでしまうおそれがある。窓を開けたまま施錠しないのは防犯上の問題がある。虫が入り込むとおそれもある。
製品によっては、排熱ダクトと呼ばれるホースで、熱気を外部に逃がすという工夫がされている。
除湿機は、部屋の広さに応じた能力選定を行うのが基本となる。発生する水分量がはっきりしていれば良いが、一般的な住宅用途であれば部屋の広さや、「畳数」によって能力を選定するのが一般的である。
高気密高断熱である鉄筋コンクリート造マンションなどであれば、外部からの湿気の侵入が少ないため、比較的能力が小さな機種であっても高い除湿効果を発揮する。通常、畳数の半分[L/日]を除湿できる性能があれば、高気密な建築物であれば、高い除湿効果が発揮される。
10畳の部屋を除湿する場合、 5[L/日] 程度の除湿能力がある除湿機を選定すれば、大きな問題は発生しない。
鉄筋コンクリート造の建物に対し、すきま風が発生する開放的な木造住宅では、除湿能力を若干高く設定するのが重要である。畳数と除湿能力を同一程度にするのが目安となり、木造住宅の6畳の部屋であれば、6 [L/日] の除湿能力を必要とする。
除湿機は、外気の流入による湿度変動の影響が極めて大きいため、設置場所に応じた能力選定が重要である。
除湿機は電気による駆動を行うため、比較的高い消費電力を必要とする。一般的には、コンプレッサー式は消費電力が小さく、デシカント式は消費電力が大きいという特徴がある。
除湿能力によって大きく違いがあるが、1日に8~10Lの除湿が可能な機種であれば、コンプレッサー式の除湿機では250~350W程度の消費電力となる。対してデシカント式の除湿機はコンプレッサー式除湿機の倍程度の消費電力となり、500~600Wの電力を必要とする。
コンプレッサー式除湿機を運転した場合の電気代を計算する。条件は「消費電力250W(0.25kW)、1kWhあたりの電気代を32円」として試算する。
1時間あたりの電気料金は 0.25kW × 1h × 32円/kWh = 8円 となる。1日に10時間運転した場合、80円の電気代が発生することになり、一ヶ月当たり2,400円程度の電気代が発生すると考えれば良い。
デシカント式除湿機を運転した場合の電気代を計算する。条件は「消費電力500W(0.5kW)、1kWhあたりの電気代を24円」として試算する。
1時間あたりの電気料金は 0.5kW × 1h × 32円/kWh = 16円となる。コンプレッサー式除湿機の計算と同様、1日に10時間運転した場合、160円の電気代が発生することになり、一ヶ月当たり4,800円の電気代となる。
500W級の除湿機は、テレビ数台分にも及ぶ大きな電力であり、月々の電気代に対して5,000円近い電気代増加は負担が大きいものと考えられる。運転時間や運転場所を制限することが、省エネルギーにつながる。
ハイブリッド式除湿機では夏季はコンプレッサー式による運転が主体となり、冬季はデシカント式による運転が主体となる。電気代は季節と周囲環境に応じた値となるため、夏季はコンプレッサー式の運転によって比較的電気代が抑えられる。冬季はデシカント式の運転となるため、電気ヒーターが運転され、消費電力は高くなる。
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