油入変圧器・モールド変圧器の構造

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変圧器とは

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電力会社の発電所から供給されてくる電力は、損失を少なくするため超高圧の電圧で送電されてきます。いくつかの変電所に設置された変圧器を経由して、都心部近くにおいては6,600Vなど比較的低い電圧が配電されてきます。

需要家側で高圧のまま使用することは、一部の大規模施設を除いてほとんどなく、低圧に変圧して施設内で電気の使用を行っています。このように、電圧を上昇させたり降下させたりするための設備を変圧器と言います。

変圧器は、ケイ素鋼またはアモルファスの鉄心と巻線で構成されており、交流電力を受け電磁誘導作用によって電圧を変えています。鉄心に二つの巻線を巻き、一方の巻線に交流電圧を印加すると、鉄心内部に交番磁界が発生し、電磁誘導により他方の巻線に交番電圧を発生させます。このように、変圧器は一つの回路から交流電圧を受け、変成して電圧を他回路に供給することが可能です。なお、変圧器を使用して周波数を変えることはできません。

変圧器の構造

変圧器の材質はケイ素鋼によるものが一般的であり、建築物の電気設備用として使用するほとんどの変圧器が、ケイ素鋼です。ケイ素の含有率が4%程度、厚さ0.35mmのケイ素板を積み重ねた、積層鉄心が使用されています。稀に、省エネルギーに配慮することを要求された場合に、アモルファス変圧器を採用することがありますが、価格が高いためあまり採用されていません。

変圧器は、磁気回路を構成する鉄心と、電気回路を構成する巻線で構成されています。電力用に使用される変圧器は、巻線を冷却のために絶縁油で満たした油入変圧器が広く普及しています。また、防災の観点から、不燃化するため油を使用しない変圧器も使用されており、乾式変圧器またはモールド変圧器と呼ばれ、普及しています。

変圧器の一次巻線に加えられた電力は、損失によって熱に変化します。熱は変圧器の劣化に繋がるため、外部に拡散させなければならず、冷却装置が設けられています。油入変圧器の場合、絶縁油を自然対流させて冷却する方式と、強制循環させて冷却する方式があります。モールド変圧器の場合、油を使用する代わりに、シリコンワニスを塗布したガラス巻線などを用い、温度上昇の限界を高くとれるようにしているため、冷却装置を持っていません。

変圧器を構成する巻線と鉄心の配置により、内鉄形と外鉄形に分類されます。内鉄形は鉄心の周りに低圧巻線を配置し、その周りに高圧巻線を配置する同心円配置となります。鉄心より巻線が多くなり、銅機械となります。外鉄形は巻線の周りに鉄心を配置したもので、鉄心の周りに低圧巻線・高圧巻線を交互に配置しています。巻線より鉄心が多くなりますので、鉄機械となります。

アモルファス変圧器とは

アモルファス変圧器は、変圧器の鉄心材料にアモルファス磁性合金を使用した変圧器で、ケイ素鋼板を使用した変圧器よりも、無負荷損失を1/3から1/4まで低減することが出来る変圧器です。アモルファス磁性合金は、ボロンやシリコンを添加した鉄をベースとする溶融金属を急速冷却し、凝固させる製法でつくられる非晶質の合金で、板厚はケイ素鋼板の1/10程度となります。

変圧器に発生する無負荷損失は、ヒステリシス損と渦電流損に分類されますが、アモルファス変圧器は非結晶であり原子配列が不規則となるため、外部からの磁化に対して影響を受けにくく、ヒステリシス損が小さいという特長を持ちます。また、渦電流損は板厚に比例しますので、ケイ素鋼板よりも板厚の薄いアモルファス磁性合金は、渦電流損も小さく抑えることが可能になっています。

1980年代のケイ素鋼板で製作された変圧器は、変圧器容量の4%程度が無負荷損失として消費されエネルギーの無駄となっていました。現在ではトップランナー基準の制定により、ケイ素鋼板の変圧器の省エネルギー性能が改善され、無負荷損失は1〜1.5%程度まで抑えられましたが、アモルファス変圧器では、無負荷損失が0.5%程度まで低減されています。

アモルファス変圧器は、変圧器の負荷率が小さいほど効果があり、経済産業省が公開している報告書「アモルファス高効率変圧器の普及による送電ロスの減少および温室効果ガス排出量削減事業」によれば、発展途上国など変圧負荷の小さな地域では、先進国の配電網よりも導入効果が高いとされ、注目されています。

アモルファス変圧器の欠点

無負荷損失の大きな削減は、省エネルギーの観点から非常に有効ですが、欠点もあります。アモルファス磁性体を鉄心として構成された変圧器は、飽和磁束密度が小さく、素材が脆いという性質から、一般的なケイ素鋼板の変圧器よりも大きく重くなります。よって、既存の変圧器をアモルファス変圧器に交換する計画では、既存スペースに設置することができるか、また床荷重が構造的に問題ないかを確認することが重要です。

また、大量生産がなされているケイ素鋼板変圧器と比較した場合の出荷量の違い、アモルファス合金の製造コスト造などの要因により、一般変圧器よりも大きくコストアップとなる点が課題となっています。

トップランナー基準の変圧器

トップランナー基準とは、対象機器毎に基準値を設定し、機械器具のエネルギー効率を高めていくように促進する施策を示しています。二酸化炭素排出量を低減し、地球温暖化を防止するための条件として、「大量に使用される」「相当のエネルギーを消費する」「エネルギー消費効率の向上が必要」という3つに対し、配電用変圧器が該当しているため、トップランナー基準を制定しこれに準拠することで、大きな省エネルギーを図ることを目的としています。

トップランナー基準に準拠した配電用変圧器は、1999年のJIS適合品と比較して30〜40%の省エネルギーが図られ、まったく負荷が運転していない状態でもエネルギーを消費してしまう「無負荷損」については、約40〜50%の削減が実現されています。

トップランナー変圧器の設置義務

変圧器を新規に設ける場合、トップランナー変圧器を採用する必要があります。変圧器が大量に使用されている現在、変圧器の無負荷損失などによって、運転している変圧器が効率の悪さによってエネルギーを無駄遣いするのは好ましくないことから、省エネルギー法の特定機器に該当するようになりました。

厳密に言えば、「メーカーが新たに出荷する変圧器は、一定の基準以上の効率を持ったものでなければならないこと」が義務付けられたということですので、例えば、変圧器の増設工事などで、倉庫に置いてある中古の変圧器を使用してはならないということではありません。変圧器を購入して製品を作るキュービクルメーカーや、キュービクルを購入・設置するユーザーには規制されるものがありません。

規制されるのはメーカーが新規に出荷する変圧器のみとなりますので、例えば施主要望として「在庫の変圧器が使いたい」「既存の変圧器を再利用したい」と指示されても、法令に違反しているということにはなりません。(平成21年3月現在)

なお、トップランナー変圧器の基準は、油入変圧器及びモールド変圧器の場合「単相10kVA 〜 500kVA」「三相20kVA 〜 2,000kVA」の変圧器の内、一次電圧が6kVAまたは3kVAのものです。また、ガス絶縁変圧器・H種乾式変圧器、スコット結線変圧器、モールド灯動変圧器、水冷・風冷変圧器、多巻線変圧器は対象外なので、トップランナー基準への準拠は必要ありません。

トップランナー変圧器採用の法的根拠

変圧器製造事業者に対しては、エネルギーの使用の合理化に関する法律により、トップランナー変圧器の製造について法的規制が掛けられていますが、使用者に対しては義務となる事項はありません。

変圧器メーカーがこの法律に違反した場合、メーカー名の公表などの措置が取られます。省エネルギーが広く求められている時代ですから、「このメーカーは省エネルギーに配慮した製品を作っていません」という公表は大きな痛手となると思われ、メーカーは規制対象の範囲で、従来の変圧器の生産を中止しトップランナー変圧器のみ製造するよう切り替えています。

アモルファス変圧器のトップランナー準拠

十数年使用された旧式の変圧器は、無不可損が非常に大きく無駄な電力消費が発生しています。これをアモルファス変圧器に交換することで無負荷損が大きく減少するため、省エネルギーに貢献することができます。

しかしながら、トップランナー基準に準拠した最新の変圧器を採用すれば、負荷損・無負荷損ともに大きく改善されているため、アモルファス変圧器の採用と比較しても、目に見えて大きな省エネルギー、環境負荷の低減が図れるかという点では疑問が残ります。

第二次トップランナー基準の制定

変圧器のトップランナー制度は2006年に開始され、省エネルギーに配慮されたトップランナー基準の変圧器が広く普及しました。しかし、さらなる省エネルギーへの対策としてトップランナー基準の見直しが図られ、2014年を目標年度として第二次トップランナー基準が開始されます。

第一次トップランナー基準であっても、30年以上前からの現行品である変圧器と比較して大きな省エネ効果を発揮していますが、さらに省エネ効果をつい今日することで、環境への配慮を行うのが目的となっています。

第二次トップランナー基準では、2006年制定のトップランナー基準よりも高い省エネルギー性が求められ、従前のトップランナー基準よりも20%程度のエネルギー消費効率の改善が求められます。変圧器製造者は、トップランナー基準に準拠した製品出荷が義務付けられるため、製造コストの増加により、調達価格の増加につながることが懸念されます。

適用範囲は油入変圧器及びモールド変圧器に限定されており、ガス絶縁変圧器、スコット結線変圧器などは対象外です。

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油入変圧器の特徴

最も一般的に普及している変圧器です。絶縁油は絶縁性能が高く、冷却性能も優れています。安価で耐過負荷性能があり、熱に強く騒音も小さめです。ただし重量やサイズが過大なため、設置スペースを十分に確保する必要があります。

変圧器内部は絶縁油で満たされており、油には可燃性があります。よって、火災のおそれがあるため、市区町村の火災予防条例によって、固定消火設備の設置を指導されることがあります。

東京都の火災予防条例を例にすると、1,000kWを超える変圧器容量がある場合、固定消火設備の設置が指導されます。モールド変圧器とすれば、油が内蔵されていないため消火設備の基準が緩和され、大型消火器で良いのですが、油入変圧器をモールド変圧器に変更するコストと、固定消火設備を導入するコストを比較すると、ほとんどが固定消火設備を設置する方が安価なため、固定消火設備を選択する事が多いです。

しかし、施設全体の不燃化への配慮や、固定消火の危険性を回避するために、モールド変圧器を採用するという案も考えられるため、施主要望も含めて、十分に検討することが望まれます。

油入自冷式変圧器

建物の電気設備設計をする際、最も多く選定する変圧器は、油入自冷式変圧器になると考えられます。絶縁油内に鉄心が入っており、鉄心から発生する熱を、油の対流によって放熱して冷却する方法です。変圧器の構成が簡易で、運用上は絶縁油の品質と寿命を考慮すればよいため、ランニングコストが小さい傾向にあります。

油入風冷式変圧器

大規模・大容量変圧器の場合、油入風冷式変圧器が採用されることがあります。変圧器外側に設けてあるフィンなどの放熱器に換気ファンを設置し、風によって変圧器を強制冷却する方法です。換気ファンを運転させることで冷却能力が高くなるため、変圧器の能力を向上させることができます。例えば、換気ファンを運転していない、油入自冷式と同様な運用方法と比較し、換気ファンを運転させることで20%から30%の変圧器能力の向上が見込めます。

ただし、換気ファンという動力設備が付属することで、ファンを運転させるための消費電力がランニングコストとして発生します。また、換気ファンのメンテナンスや清掃、長期間使用した場合はオーバーホールの実施など、換気ファンを設置したことによる点検コストの発生も、視野に入れる必要があります。

変圧器の振動と騒音の対策

変圧器からは、一定の騒音と振動が発生します。建物内に変電所を設ける場合、変圧器からの振動が躯体を伝播し、思いがけない場所から振動や低周波騒音が発生することがあります。これを防止するため、変圧器の下部に防振ゴムを取り付けたり、床スラブを浮床構成とするなどして、防振対策を施します。

電気設備用として使用される50kVA〜500kVA前後の変圧器からは、およそ50dBの騒音が発生します。暗騒音の高い場所であれば気にならないのですが、閑静な住宅街の夜間暗騒音で考えると、変圧器の騒音は比較的高い部類になります。マンションの電気室から、変圧器の振動騒音が住宅内まで伝播し、クレームに発展した例も少なくありません。

モールド変圧器の特徴

油を使用していない変圧器で、乾式変圧器とも呼ばれます。小型で軽量化が可能であり、油を使用していないので火災のおそれが軽減します。前述していますが、油入変圧器を採用した場合に、固定消火設備が必要になることがありますが、モールド変圧器の場合は油を使用していないため、固定消火設備の設置が不要になります。

固定消火設備+油入変圧器とするか、モールド変圧器とするかのコスト検証を行い、メリットのある方を選ぶようにします。また、モールド変圧器の利点として、分解・現地組立ができるので、大規模施設や高層ビルなどで、変圧器設置場所にアクセスしづらい場所にあったとしても、部品単位で搬入や交換をすることができます。

ただし、モールド変圧器は油入変圧器と比較すると騒音や振動が大きいという欠点があります。また、過負荷や熱にも弱く、比較的デリケートな機器と言えます。

乾式自冷式変圧器

モールド変圧器を採用する場合で、多く選定される変圧器として、乾式自冷式変圧器があります。変圧器周囲の空気の対流で冷却する方式で、変圧器本体以外に特別な機器や冷却媒体は不要です。変圧器本体のみで完結できる冷却方式であり、変圧器以外の設備がないため、ランニングコストが非常に小さいのが特長です。

モールド変圧器の結露対策

モールド変圧器は、屋外盤に収容して使用しないのが原則。モールド変圧器は結露に弱く、屋外盤に収容した場合、結露による劣化のおそれが高まることが理由です。やむを得ず屋外に設置する場合は、結露対策を特に重点的に行う必要があります。

昼と夜の温度差によって盤内結露が発生した場合、モールド変圧器の絶縁劣化が発生します。盤内にスペースヒーターを入れて余熱するか、盤の天井面に断熱措置を施すなどにより、結露を防止する措置が必要です。

変圧器選定時の注意

油入変圧器、モールド変圧器に共通して言えることですが、単相変圧器は500kVAを上限とし、三相変圧器は750kVAまでを標準と考えるのが良いと考えられます。これ以上はメーカーによっては標準設計品でなかったり、本体重量や寸法が大き過ぎたりするため、搬入計画が困難になりますし、配電エリアが大き過ぎることによる停電の広範囲化などにもつながります。

変圧器の経年劣化・温度上昇と過負荷運転

変圧器は15年〜20年経過すると、変圧器内部での高圧リード線の絶縁劣化など、外観に現れない経年劣化が進行します。変圧器が振動した場合など、内部鉄心と充電部が接触したりすると、地絡事故になります。変圧器の寿命を大きく左右する要素として、変圧器の温度上昇と過負荷運転があります。

変圧器の温度上昇と限界

油入自冷式変圧器の巻線及び絶縁油は、周囲温度40℃以下であれば、全負荷運転時の温度上昇55℃に耐えることが規定されています。これ以上の温度上昇が発生すると、著しい絶縁劣化及び寿命の低下となります。

油入変圧器の過負荷運転について

変圧器は、定格以上の負荷をかけても正常に運転することができます。特に、油入変圧器は温度上昇が遅く、短い過負荷運転であれば温度上昇も比較的小さく済むため、短時間の過負荷であれば異常を発生させることなく行うことが可能です。

ただし、過負荷運転が発生する以前の運転状況や周囲温度により、過負荷をかけることが出来る時間は大きく変化します。周囲温度が低いほど変圧器本体は冷却されているので、過負荷に耐えることが出来ます。対して、周囲温度が高く、長時間定格に近い運転をしていた変圧器は、十分に過熱されている状態になるため、過負荷に耐えることができません。

なお、どのような環境であっても、定格電流の150%以上の過負荷をかけることは避けるようにします。また、モールド変圧器は油入変圧器よりも過負荷に弱いことに注意が必要です。

変圧器の保護・試験

変圧器の保護は、変圧器内部保護と回部保護に分類されます。変圧器の内部保護は、内部故障を検出し、故障による二次災害を防止する事を目的としています。対して、外部保護は、変圧器二次側の短絡や地絡、過負荷による異常加熱などから保護することを目的としています。内部保護・外部保護を実現するため、変圧器に対して「電気的保護装置」または「機械的保護装置」を設けます。

変圧器の内部保護を行う保護装置として、比率作動継電器、過電流継電器、地絡継電器、限流ヒューズなどがあります。

比率作動継電器

比率作動継電器は、変圧器の内部故障検出にもっとも広く使用されている継電器で、変圧器の一次側と二次側に変流器をそれぞれ設け、内部故障が発生した時に電流が異常となった場合、発生する差電流を検出します。外部短絡などによる異常電流・電圧によって差電流が発生し誤動作することがあるため、抑制コイルによって不動作領域が調整されています。

特別高圧変圧器の保護

特別高圧変圧器の保護は、通常の高圧変圧器の保護にいくつか設備が付加されます。窒素密封形油入変圧器の場合、衝撃ガス圧継電器を使用し、窒素ガス圧を検出します。コンサベータ形油入変圧器の場合、衝撃油圧継電器やガス検出継電器を使用し、油圧変化を検出します。

変圧器の試験

キュービクルを発注し、工場検査を行う場合、変圧器も受入試験を行う機器の一つとなります。受入検査では、変圧器の構造・極性・耐電圧・部分放電・比誤差・位相角・零相二次電流・残留電流などを測定します。変圧器に一定の負荷を掛ける形式試験としては、耐電流・温度上昇・雷インパルス耐電圧・過電流定数・過電流倍数・励磁インピーダンスの試験があります。

寸法が制作図と合致しているのは当然ですが、極性が設計の指定通りとなっているか、絶縁性能に問題はないか、巻線と対地間の部分放電電荷量の検証などを確認します。形式試験では、過電流に対する熱的性能・機械的性能確認、温度上昇の確認、雷インパルス耐電圧の確認などを行います。

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変圧器容量の選定と計算

変圧器の選定では、将来の負荷増設を考慮し、かつ負荷の始動電流などに耐えられる余裕を持った設計とします。一般的な計算方法は 設備容量[kW] / 総合力率[%] × 需要率[%] で求めた容量を選定します。

例えば 設備容量150kW、総合力率95%、需要率60%の場合

150 / 0.95 × 0.6 = 94.7 [kVA] になるため、直近上位の100kVAが選定候補になります。ただし100kVAを選定してしまうと、以降の増設対応もできませんし、若干の需要率増大にも追随できません。よって。余裕を見て150kVAを選定するなどの考慮をするのも、設計コンセプトとして重要です。当然、コストアップになるため施主の了解を得ることも大切です。

始動電流の少ない照明負荷などでは、前述した方法で問題ないのですが、始動電流が過大に発生する電動機では電圧降下を考慮した計算が必要になります。

電動機容量37kW、効率90%、力率80%、需要率100%のファン専用変圧器を選定する場合を考えてみます。

単純に変圧器容量を算定すると、37 / ( 0.9×0.8 ) × 1.0 = 51[kVA]になるため、変圧器は75kVAが候補になります。次に、この変圧器による電圧変動率を求めます。

電圧変動率は始動電流の値と、変圧器の%インピーダンスで変化しますので、ここでは仮に「始動電流700A」「%インピーダンス2.5%」として計算をしてみます。

75kVA変圧器の定格電流値を216Aとすると、電圧変動率は、

%インピーダンス[%] × 始動電流[A] / 定格電流[A] = 電圧変動率[%]

という式で計算できますので、2.5 × 700 / 216 = 8.1[%] になります。電圧変動率は10%以下が望ましいとされているので、この変圧器の選定で合格範囲であることがわかりました。このように、エレベーターやファンなど始動電流が大きな機器へ電源を供給する変圧器の選定では、電圧変動率を考慮して計画しないと、場合によって不足電圧による故障が発生したり、過電流による故障が発生したりという不具合に結び付くことがあります。

変圧器のバンク分け

変圧器は単体の容量が大きくなると、励磁突入電流の増大や短絡電流の増大となりますので、保護装置もそれに耐えられる大容量の機器を選定しなければならなくなり、コストアップに繋がります。

また、一つの変圧器が供給する範囲が大きくなると、事故やメンテナンスによる影響範囲も大きくなり、電力供給の信頼性が低くなります。信頼性向上のためには、変圧器を複数のバンクに分け、保守性を高める検討を行います。

バンク数が少なければ電力系統の構成が単純になり、据付面積が小さくなるため、経済性は良好になります。しかし、前述したように保守性や電力供給の信頼性が低下しますので、コストと品質に見合った最適な計画を検討する必要があります。

電灯変圧器計画・選定の注意点

電灯変圧器を選定する場合、設備不平衡率に注意して計画しなければいけません。設備不平衡率とは、線間に接続される単相負荷の最大最小に差が発生することによる、相全体の負荷の偏りを示しています。

単相回路は、3本の電線のいずれかが最大容量に達すると、それ以上の電力供給が不可能となります。設備不平衡率をできるだけ小さくすることで、効率良く運用することができるため、電力会社では設備不平衡率を30%以下に抑えるように指導します。設備不平衡率の計算は下記の通りです。

設備不平衡率 = 各線間に接続される単相変圧器容量の最大最小の差 / 総変圧器容量×(1/3)× 100 [%]

例えば、単相変圧器100kVA×3台、50kVA×1台、三相変圧器200kVA×1台の受変電設備がある施設で計算してみます。

変圧器全容量は 100×3+50×1+200×1 = 550 [kVA] となります。単相変圧器の最大最小の差は、100 - 50 = 50 [kVA]です。

設備不平衡率 = 50 / 550×(1/3)× 100 = 27.27 [%] となりました。設備不平衡率は30%を下回っているため、この受変電設備系統は、不平衡について問題ないことがわかりました。

このように、受変電設備を計画する場合には、変圧器容量による設備不平衡率を検証する必要があります。

変圧器の並列運転

変圧器に接続する負荷の増大や、負荷変動に対して柔軟な対応が出来るように、変圧器を並列に接続することで並列運転させることができます。この場合、一次二次定格電圧が等しいことはもちろん、極性が等しいこと、各変圧器のインピーダンス電圧が等しいこと、各変圧器の%抵抗と%リアクタンスの比が等しいことなどが、並列運転の条件となります。

  • 極性の一致
  • 巻数比の一致
  • %インピーダンスの一致
  • 巻線抵抗と漏れリアクタンスの比が一致
  • 相回転が一致
  • 角変位が一致

変圧器の結線方法

スタースター結線(Y-Y結線・星形-星形結線)

6,600V/210Vの設備用変圧器として一般的な結線方法です。変圧器容量が50kVA以下の場合に使用するのが原則です。デルタ結線が存在しないため、第三調波がそのまま付近に流れてしまい、周囲で通信障害等が発生するおそれがあるので、大容量での採用は避けるべきです。インバーター機器は出来る限り接続しないことが望まれます。

スターデルタ結線(Y-△結線・星形-三角結線)

6,600V/210Vの設備用変圧器として一般的な結線方法です。第三調波がΔ結線内部を循環するため、線路に流れ出ません。二次側に中性点が出ていません。需要家では、二次側が低圧の場合がほとんどですので、この場合は三相の内の1端子を接地をして良いと定められているので、B種接地線を二次側の端子のひとつに繋ぎ込みます。

設備計画では、3φ200Vを確保したい場合に使用されます。415Vを二次側に確保したい場合は、スターデルタ結線にしてしまうと混触防止板対応が必要になる上に、対地電圧がそのまま415Vになってしまうため望ましくありません。

デルタスター結線(△-Y結線・三角-星形結線)

6,600V/415Vの設備用変圧器として一般的な結線方法です。二次側がスター結線なので中性線を接地できます。二次側の中性線を接地することで、対地電圧が 1 / √3 になりますので、415Vを二次側で確保したいときにデルタスター結線の変圧器を使用すれば、対地電圧が 415 / 1.73 = 231[V] とできるため、対地電圧300V以下に抑えられます。

デルタデルタ結線(△-△結線・三角-三角結線)

6,600V/210Vの設備用変圧器として一般的な結線方法です。一次側と二次側をデルタ結線にすることで、相電流を1/√3に抑えることができ、導体太さを小さく設計できます。ただし、デルタ結線はスター結線と比べ巻線が大きくなります。

50kVA〜750kVAまでは、スターデルタ結線とすることで、導体が太くても巻線が少ないので安価となりますが、750kVAを超えると、巻線数よりも導体太さの方がコスト増となるため、メーカーの標準品では、750kVAを境界に、スターデルタ結線とデルタデルタ結線を使い分けています。

V-V結線

単相変圧器二台を結線し、三相変圧器として使用したい場合に行う結線方法です。この結線方法では、単相変圧器の全容量に対して86%程度までしか利用することができません。

V-V結線は、3台の変圧器を組み合わせてΔ-Δ結線で運用している変圧器で、事故によってV-V結線になってしまう事例が多発しています。変圧器の引出線が緩み、外れによりV-V結線状態となってしまい、欠相状態にもならず、電動機や電灯も問題なく稼働してしまうことから事故検出が難しく、軽負荷運転の場合は気が付かないこともあります。

Δ-Δ結線の変圧器を全負荷運転している場合、変圧器稼働中に結線が外れると、残った2台の変圧器が過負荷運転になってしまい、異常発熱による焼損事故になるおそれがあります。

スコット結線(スコット変圧器)

三相電源から二組の単相電源を得る場合に使用する結線方法です。大容量の単相負荷を使用する場合に採用されることが多く、主に非常電源を供給するための専用変圧器として採用されます。

通常、三相電源の内2本から電源を確保すると不平衡となりますが、スコット結線とすれば、単相負荷を二系統に分割することができ、接続方法に幅を持たせることができるようになるため、不平衡を防止する系統を作ることができます。

各種変圧器メーカーが通常設計を行なっているラインナップは、10〜100kVAまでと小容量に限られています。

スコット結線変圧器の二次側には2つの出力端子を得られ、それぞれ単独に単相3線式、または単相2線式の電源を2つ取り出すことができます。ここで、スコット結線変圧器の一次側を完全に平衡させるためには、2つの出力端子の負荷を平衡させる必要があります。

例えば、50kVAのスコット変圧器を使用する場合、25kVAの負荷が使用できる端子を2つ取り出すことができます。各々の端子の負荷を同じにすることができれば、一次側の系統は平衡します。2つの端子のうち、片方だけを使用することは可能ですが、その分だけ一次側に不平衡が発生します。

交流2組の位相差は90°となり、負荷平衡時の利用率は86.6%となります。スコット結線の変圧器は、主として非常用電源を確保するための変圧器として使用します。

異容量V結線

三相電源と単相電源を同一変圧器から供給する方式で、灯動共用方式とも呼ばれています。三相負荷を供給する相を専用相、三相負荷と単相負荷を供給する相を共用相と呼びます。単相変圧器2台で電源供給が可能なため、安価で経済的な設計が可能となりますが、高圧側の不平衡を発生させる恐れがあるため、高圧側の結線に注意が必要です。

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変圧器の励磁突入電流とは

通電していない変圧器に電圧を印加したとき、変圧器の鉄心の磁束が飽和し擬似的な短絡状態になってしまう現象です。瞬時的に定格電流の10〜15倍を超えるような大電流が流れ、定格電流値に推移するまで数秒の時間を要します。

励磁突入電流は、電源投入時だけでなく、瞬低(瞬停ではなく、電圧の瞬間的な低下)時にも発生しますので、電源投入後の運用中にも発生のおそれがあります。

過電流継電器(OCR)の設計をする場合、励磁突入電流を事故による短絡電流と間違えて動作しないように、設定を決める必要があります。遮断器を投入する瞬間だけOCRをロックするということは出来ませんので、保護協調の考え方は、

短絡電流>OCR整定値>励磁突入電流

という関係で電流値を設定します。

最新の過電流継電器では、短絡電流に含まれる高調波成分と励磁突入電流に含まれる高調波成分を比較し、励磁突入電流では検知させないという、ファジー推論という仕組みを利用した製品も開発されています。ただし保護協調の考え方は先に記載した「電流値の大小を揃える」ことが原則なので、機器の特殊機能に頼らずに協調を取ることが望まれます。励磁突入電流に含まれる高調波成分も常に一定ではないため、機能が活かせない場合も考えられるためです。

変圧器の励磁突入電流計算

変圧器の定格電流の10倍とし、設置した変圧器ごとに計算して全てを累計した電流値を、0.1秒時点としてポイントし、この電流値でOCRが瞬時動作しないように整定すれば、とりあえずの保護協調になります。(ただし、かなり安全側の算出です。)

詳細な励磁突入電流の計算をする場合、変圧器メーカーから納入する変圧器の励磁突入電流の波高値、時間ごとの減衰曲線グラフを提出してもらい、設置する変圧器の台数を全て足して、保護協調曲線にプロットしていく必要があります。こうすれば、確実な保護協調が可能になります。

過電流継電器の最短動作時間は、一般的に0.03秒からですので、0.03秒から0.1秒の間で過電流継電器の動作特性カーブに交差しなければ、協調が取れていることになります。変圧器容量の10倍を0.1秒とする方法は、かなり過大な電流値が出ますので、過電流継電器の設定値が高くなりがちです。

変圧器の保護の考え方

変圧器の保護は、過負荷に対する保護と、短絡に対する保護を考える必要があります。過負荷が継続したり短絡電流が流れたりすると、変圧器を構成している巻線が過熱され、絶縁の劣化や、内部故障の原因となります。

過負荷保護は、変圧器に流れる電流値によって保護する方法と、変圧器本体の温度を計測する方法があります。短絡保護は、変圧器の内部故障や二次側電路の短絡に対して保護します。

変圧器の限時要素と瞬時要素による保護

変圧器は、過電流継電器を使用して保護を行います。過電流継電器による保護には、限時要素と瞬時要素の二種類があります。限時要素は、長時間に渡り過負荷状態を継続した状態で作動し、継電器を動作させるもので、瞬時要素は短絡など瞬間的な大電流に対して継電器を動作させるものです。

限時要素による保護の場合、変圧器定格電流の120%〜150%に設定し、始動電流や励磁突入電流で動作しないことを確認します。油入変圧器は過負荷に強いですが、モールド変圧器は過負荷に弱く、絶縁劣化などを引き起こすことがありますので、設定値には十分な注意が必要です。

瞬時要素は、短絡電流で確実に動作するように設定します。この場合、励磁突入電流を算出し、短絡電流>瞬時要素設定値>励磁突入電流という関係になるように設定しなければいけません。励磁突入電流の方が大きいと、変圧器を通電した瞬間にトリップしてしまいます。

変圧器の温度保護

油入変圧器の場合、本体に警報接点付のダイヤル温度計を付属し、絶縁油の温度を計測します。モールド変圧器の場合は絶縁油がありませんので、コイル付近の温度を測定し、設定値を超過した場合には警報を発信したり、換気ファンを運転させたりするように計画します。

日常のメンテナンスを容易にするため、キュービクルの前面扉を開放せずに温度を確認できるよう、ダイヤル温度計の前面に測定窓を設けると良いでしょう。

変圧器の諸特性

変圧器には上記以外に諸処の特性があります。寿命、使用周波数、耐熱クラスについて解説します。

変圧器の寿命

変圧器は、常に定格電流ギリギリのピーキーな使い方をしていた場合、短時間過負荷を掛けていた場合、長時間過負荷を掛けていた場合など、それぞれ期待される寿命が違ってきます。一般的に、定格電流以下で使用していた場合の変圧器の寿命は、25年程度と言われます。

変圧器が寿命を迎えるほどの年月が経過しても、その時点で突然使えなくなるというような性質のものではありません。変圧器の寿命は、絶縁劣化が進行し、開閉サージや短絡などが発生したときにショックに耐えられず、破壊を起こす状態になったものを示します。劣化に気付かなければ、寿命を迎えているにも関わらず運用を続けてしまい、破壊事故が発生して初めて寿命に気が付く、ということになりかねません。定期的な変圧器の検査・試験が、事故を防止する上で重要になります。

例えば油入変圧器の場合では、絶縁材料の強度が一定基準以下になった場合を寿命とするのが普通です。絶縁紙の劣化測定がその方法になりますが、変圧器を分解しなければ絶縁紙を取り出すことができないので、代替方法として絶縁油を採取し、油内部に溶け込んでいる成分(一酸化炭素量、二酸化炭素量、メタン量、エチレン量など)を測定し、一定値以上が溶け込んでいた時点で、交換するかを判断するという方法があります。

変圧器の周波数違いによる使用可否

変圧器は東日本と西日本の周波数の違いによって、使い分けが必要です。変圧器の特性上、東日本用の50Hz対応変圧器は60Hzの西日本で使用できますが、逆は使用不可能です。50Hz用の変圧器を60Hz地域で使用した場合、励磁電流や無負荷損失が減少して効率が良くなりますが、短絡インピーダンスの増加や、電圧変動率の増加という変化を起こします。

変圧器の耐熱クラス

変圧器を構成する絶縁材料の耐熱特性によって階級が定められており、許容最高温度により、A種から250までに分類されます。

  • A種:105℃
  • E種:120℃
  • B種:130℃
  • F種:155℃
  • H種:180℃
  • 200:200℃
  • 220:220℃
  • 250:250℃

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