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電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > レースウェイ・メタルモール

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メタルモールとは

ケーブルや絶縁電線を収容するための電気材料のひとつである。筒形状をしており、金属製のため外部からの衝撃に対して強いという特徴がある。メタルモールは、電気設備技術基準上「一種金属線ぴ」に該当するため、規定された技術基準に準じて、施工を行わなければならない。

メタルモールは、事務所においてコンセントやスイッチを設置する際に、壁面に対し露出配線を立ち下げるために良く使用される。

一種金属線ぴ工事(メタルモール工事)を行い、任意の場所に、露出でも綺麗な配線工事を行う事ができる。メタルモールはどこの部分で切断できるから、梁の障害物が多い露出天井などでも、比較的配線工事が容易である。

なお新築の建築物では、電気配線をできる限り壁内や床下に隠ぺいにするため、メタルモールを目にすることはほとんどない。内装工事や、パーティション構築などを進めた場合に、やむを得ず露出工事で電源やLANケーブルを敷設しなければならない場合、メタルモールを使用する。

設備シャフトや機械室内において、立下げ配管の代替としてメタルモールを使用することもあるが、金属管による施工が安価で堅牢なためメタルモールはあまり使われない。

加工中の樹脂モールの写真

メタルモールの規格と形状

メタルモールはサイズによって「A型」「B型」「C型」の3種類が規格化されている。A型は200m㎡、B型は580m㎡、C型は1,200m㎡の断面積となっており、電線の収容可能数がそれぞれ違う。

直線部分のメタルモールに対して、曲がり部分は「エルボ」、直線同士の接続には「カップリング」を設けて施工する。天井との見切りには「コーナーボックス」と呼ばれる一回り大きなボックスを設けるのが一般的である。

メタルモールを接続できるスイッチボックスがあるので、途中にスイッチやコンセントを設けることも可能である。直線メタルモールを途中で塞ぎたい場合は「エンド」と呼ばれる末端用部品を用いて閉塞する。

天井にメタルモールを敷設し、梁の突起物をまたぐ場合、内側に90度曲げる「インターナルエルボ」と、外側に90度曲げる「エクスターナルエルボ」を組み合わせることで対応する。ハンチなど梁が特殊形状の場合は「45度インターナルエルボ」など特殊形状のエルボを使用すると良い。これらはA型~C型まで全てのメタルモールに共通部品が存在する。

C型のメタルモールは金属線ぴ規格ではなく金属ダクト規格となる。電気設備技術基準の取扱いが変わるので注意が必要である。

金属線ぴ工事と金属ダクトの違い

金属製の筒形(樋形)の本体にケーブルや電線を入線し、カバーを取り付けたものは「金属線ぴ」である。電線を収容するためのメタルモールやレースウェイは金属線ぴに該当し「メタルモールまたはメタルモールジング」は一種金属線ぴ「レースウェイ」は二種金属線ぴとして区別する。

金属線ぴの幅が大きくなると、電気設備技術基準上「金属ダクト」と呼ばれる。機能上や用途は同様であるが、幅5cm以下の金属製の筒を「金属線ぴ」とし、それ以上の筒形状は「金属ダクト」である。

C型など大型のメタルモールでは「金属線ぴ」ではなく「金属ダクト」として取り扱う必要がある。どちらの場合であっても、電気工事士の資格所持者による施工が必須である。

レースウェイとは

二種金属線ぴに区分されるレースウェイは、屋内配線の内、天井のない駐車場や倉庫などで照明器具を固定するため、かつ電線やケーブルを収容し電源を供給するために、天井から吊ボルトで吊り下げて使用する金属製部材である。レースウェイに照明器具を設置することで、蛍光灯を直線状に敷設できるので仕上がりが美しくなる。

天井スラブに直接照明器具を取付けるのと違い、レースウェイ上に照明器具を設置することで、レースウェイ上での照明の移動や移設が容易になるため、レイアウト変更の多い工場などで採用されることが多い電気材料のひとつである。

レースウェイ本体は、溶融亜鉛めっきやスーパーダイマー(合金)を選定するのが一般的である。レースウェイは専用機材によって切断や孔開けが可能であるが、切断端部は見栄えが悪く、接触すると怪我や電線類の損傷につながるので、専用カパーキャップで保護する計画とすべきである。

レースウェイの上向き施工と下向き施工の違い

レースウェイは、照明器具を取り付けるために使用する場合、開口部を下向きにして敷設するのが原則である。上向きにした場合、上部をカバーで閉塞しなければ金属線ぴ工事として認められないため、ケーブル配線でなければ施工できないという施工上の規制が発生する。

照明器具の取付をせず、かつ絶縁電線を収容しない施工方法であれば、上向きの施工が可能である。上向きのレースウェイにケーブルを収容するなど、ケーブルの保護用としてレースウェイを使用しているという取扱いであれば、金属線ぴ工事ではなくケーブル工事として法規を満足するので、上向き施工でも支障ない。

レースウェイに取り付けられたスポットライトの写真

メタルモール・レースウェイの設計と計画

施工場所と接続の制限

メタルモールやレースウェイの「金属線ぴ工事」は、カバー付きの保護ケースのような形状となっており、電線の挿入や引抜きができる形状ではないため、点検できない隠ぺい場所には敷設できない。「乾燥した露出場所」または「点検できる隠ぺい場所」に限り設けることが可能なので、ボード壁などで隠蔽される場所に敷設できない。

かつ、金属線ぴは電線管と同様、内部での電線接続は禁止されている。電線を接続する場合、天井裏にジョイントボックスを設け、接続部を容易に点検できる施工方法としなければならない。

レースウェイ(二種金属線ぴ)の場合も、直線レースウェイ内部でジョイントすると、点検が可能であってもどこでジョイントしているか容易に発見できないため、レースウェイ同士を接続する部分にアウトレットボックスやジョイントボックスを設けて分岐すると良い。

金属線ぴの占積率

メタルモールやレースウェイに収容する電線の占積率は、20%以下として計画する。線ぴ内に大量の電線を収容すると、放熱性能の低下による許容電流の減少や発熱を引き起こし、事故につながる。20%の占積率を超えない計画とすべきである。

D種接地の確保

漏電による感電事故の防止のため、レースウェイやメタルモールには接地線を接続しなければならない。電力線を収容する配線用材料であり、電線管工事と同様、漏電に対する保安目的として接地の確保が必要である。

金属線ぴ工事の使用電圧は300V以下と規定されているため、接地の種別はD種接地工事となる。

「交流対地電圧150V以下で、人が容易に触れることがなく、長さ8m以下の金属線ぴ」または「長さ4m以下の金属線ぴ」は接地を省略できるという緩和規定がある。ごく短い部分にメタルモールやレースウェイを使用する場合、接地の接続が不要とできる可能性があるので、確認すると良い。もちろん、短い部分であっても接地を確保するのが安全である。

 
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